モノクロームの画面の向こうにいる異型の青年が手招きする。
こちらにおいでよ、楽しいよ。・・・そのジャングルでは、動物も人間も人間モドキも共に仲良く暮している。
何故かなつかしいような、穏やかな異世界。
北川は、「ダーマトグラフ」という、業務用の特殊な油鉛筆と紙を使って、この独特な世界の物語を白黒のコントラストの強烈な表現で描写してきた。濃厚なデティールが異世界に強いリアリティを与えている。そのなかで、爬虫類の女性もライオンの少年も巨大なカエルも、それぞれの役割を生き生きと演じている。異物がそのまま共存する、いつか実現するかもしれない「向こう」の世界を彼女は見せてくれている。
その世界から抜け出てきたような美しく繊細な容貌を持つ北川は、自宅で沢山の動物や植物と暮らし、昼は養護施設の職員としての仕事もしている。彼女の触れる生きるものたちの手触りが絵肌に表されるのだろう。
生きるには辛いこともある。だが自然と溶け合った彼女の世界の者たちは、鑑賞者をそっと包んで言う。「僕達を思い出して。生きるのは悪くないよ。」(秋華洞 田中千秋)
2018/03/12
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