一貫して女を描き続けてきた池永は、彼だけの画法を生み出すのに10年余りかけたが、実は今も新たな筆法を探そうとしている。
より妖しくより美しく際立つ池永の女性画の世界をご紹介します。
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夜見る夢の筋書きは、誰が書いているのだらう。
老いても初恋の夢を見る、私の記憶を装った、誰も見知らぬ物語。
夢遊に咲いた白い花、手折ろうとするは誰が指か。
我もと伸す腕先は、あの日の指か老いた手か。
今でも初恋の夢を見る、目覚むるまでの嘘を見る。
夜遭ふひととの筋書きを、繰っているのは誰だらう。
夢遊に揺れる白い花、手折って去ったは誰が指か。
― 『白い花』池永康晟 ―