今回秋華洞ブースでは、現代美術、近代、そして江戸美術までの歴史の中で総合的に魅力ある日本美術との世界を紹介する。
まずは陳珮怡、私達は彼女を「東洋一の猫描き」と呼んでいる。日本においては画集が発刊されるなど近年台湾と同様に益々人気を集めている。彼女の絵の特徴は、猫を「可愛らしいもの」という定義とか観念から解き放っているところにある。猫と共に生き、猫たちのありのままの姿を描く。その向こうには猫への愛情が見えてくる。
ダーマトグラフで描かれる北川麻衣子の作品の世界は、黒と白、すなわち、闇と光の中に暮す人のような獣、獣のような人たちで賑やかである。画中を覆う濃厚にして精緻な黒には、「人ではない何か」へ向けた憧れと畏怖の念が宿っている。ひときわ異彩を放つ創作が見るものを陶酔へと誘う。
北海道の地において、ほぼ独学で日本画の古典技法を学んだ蒼野甘夏は、伸びやかで繊細な筆致で独自の幻想世界を描く。伝統にとらわれず自由自在に使いこなし、その絵画世界は眼に心地よい。妖精のように描かれる女性たちは、性別の矩さえも乗り越えて自由自在に空間を飛び回る。
2017年から中国福建省で人形制作と発表を始めたdaikichiは、一般的なイメージの芸術家とは異なる。当初、彼の発表の場はフィギュアの世界であった。だが彼の造形はフィギュアの世界のステレオタイプとは無縁の新鮮な美しさを表現している。指先、足、目、唇、歯と歯茎、舌などが響鳴して独自のリアリズムをなし、艷やかな美しさで見るものを魅了する。