作家に迫る(第五回) 陳珮怡|カタログ「秋華洞」2017年秋号

日本初登場の台湾の猫描き
 絵画の世界に、「猫」というジャンルが確立されたかのように、世の中には次々に猫の絵が生み出されている。可愛い猫の絵は沢山ある。その中で台湾の画家、陳珮怡(チン・ハイイ)の猫は生きている。絵の中で確実に生きている。新作「警戒」、絨毯の上で身構えるこの猫は一秒後に対象に飛びかかるのか、ぷぃっと立ち去ってしまうのか? 一種の緊張感が漂う。

チン・ぺイイ(陳 珮怡)「警戒」2017

素材を最大限に活かす
 11月に開催される池永康晟との二人展が日本で初めての展覧会となる、陳珮怡(チン・ハイイ)は現在33才、以前から池永康晟が日本画技法で猫を描く画家として注目してきた。
 一時は教員になるか迷っていた陳だったが、「岩絵具」という素材に出会って、創造の面白さや自分の絵の可能性を感じたのだと言う。絹は縦横に織り込まれた、透けて見える素材。その上に岩絵具を載せると水分を含んだ層が重なって徐々に広がっていく。そして表面の絵具を際だたせるため、裏側からもぬっていく。こうすることで表面は薄く軽やかでも存在感が生まれる。細かく柔らかい題材を写実的に描くという陳が取り組んでいるテーマにマッチしている。1本の線を納得がいくまで何度も何度も描き直す、あえて難しい手法にトライし、難しい素材も試した。学生時代の修行のような実践の繰り返しが驚くほど緻密な絨毯や猫の描写を支えている。

チン・ぺイイ(陳 珮怡)「滿月」2017

あくまでひたむきに
 単に猫好きだから、流行っているから猫を描くわけではない。あえて避けていた時もあった。題材としてどう感情移入すればよいか最初はわからなかったと言う。素材と対象に真摯に向き合う姿は、自分の考える「肌」の色を十年かけて見出した池永に通じる。研ぎすまされた感性で描いた猫と絨毯は人々の心を捉え、注文が殺到しているが、「私はまだ絵のスタイルと模索している最中」とその姿はあくまで謙虚だ。(秋華洞 田中千秋)