作家に迫る(第三回) 鈴木博雄|カタログ「秋華洞」2017年春号

 鈴木博雄の作品にただよう愛らしさときたら、もうたまらない。
 鈴木は芸大修士課程で「修復」を学び、古画に触れるなかで、独自の絵画観を見出した。日本美術の本質は、「ユーモア」であると。

鈴木 博雄「針鼠と装飾樹」2014

 鳥獣戯画から芦雪、北斎、暁斎あたりまで、「笑い」を取り入れた日本画があったのに、戦後の美術ときたら、ひたすら生真面目であるばかり。そこに鈴木は疑問を抱いた。彼の作品は江戸以前の美術が持つ色と線の美学と、絵画の物体としての堅牢さを併せて備えつつ、愛らしさと可笑しみが溢れる。一見「可愛い」だけに見える作品には、実は本当の「伝統」とは何だろう、という問いが隠されている。

鈴木 博雄「天竺徳兵衛」2015

 絵画史への批評的言及は近年、「現代アート」の独壇場となってきた。会田誠や村上隆など、美術史を換骨奪胎して笑いの要素を加味する画家は少なくない。だが、鈴木は「日本画」という体裁を丁寧に守りながら、控えめに美術史への絵画的言及を始めたのだ。
 「可愛い!」そして何かジワリとした余韻を残す。こんにち、伝統こそが最も新しいのだ。(秋華洞 田中千秋)