蔵丘洞で、原崇浩さん個展。
ひとは彼の作品を見ると幸せになる。あの空間にいる間、私は幸福であった。何故だろう。多分虚飾のない魂に触れるからだろうと思う。
彼の絵は、風景も静物もいいけれど、女も男もいい。男もいい絵は、歴史的には幾らでもあるけれど、近頃の日本では、あまり知らない。
例えばヌードは、女であれ男であれ、純粋に肉体を描くことが面白いと原さんは言う。ともかく、精神性なんてことは、言わない。誠意ある画家は、おそらく誠意ある職人がそうであるように、技術のこと以外、語りたがらない。でも私たちが受け取っているのは、それでも精神だったりする。
本人の人柄に触れているから、勝手に「精神に触れている」、なんて、思い込むこともあるだろう。いや勿論、文章にすると、筆の勢いで褒めすぎてしまうきらいもあるかもしれない。
ところで展覧会の準備をしていると、どの作家をやっていても、困ったなあ、こういうのできてきてしまった、とかしょっちゅうだ。作家の前で褒めてばかりということは、まずない。僕らは仕事だから、厳しいことも、大抵言う。それで言ってどうなるのか、作家は傷つかないか、怒らないか、よくなるのかならないのか、さらには彼らが離れていくのか近くなるのか、いつも不安である。ああ、やはり言わなければよかったとか違う言い方もあったのではないかとか、あれこれ考える。
でもそのことに、この仕事をやっていく人生がある。彼らにもその人生がある。
原さんは無茶苦茶批判してくださいとカラカラ笑う。いつも過渡期で、と言って見せたりする。不安がすこし、心地よさに変わる。
そんなわけで、岡さんと三人で食べたカレーは、とても美味しかった。京都で食べるインドカレーは、インドで食べたインドカレーに、負けずとも劣らない。
彼の個展は秋華洞では2019年12月だ。(代表 田中千秋)