作家に迫る(第十九回)友沢こたお |カタログ「秋華洞」2021年夏号

友沢こたおは我々の視界の前に突如現れた。近頃の日本美術で、20歳で才能を露わにする例は稀である。それだけに彼女が落ち着いて本当の花を咲かし続けられるかどうかは、私どもや周囲の姿勢にもよるところが大きいとも思われる。

早熟ともいえる彼女の作品世界を彩るのは、対象を掴んで一気に大きく画面に定着させる感覚の鋭さと圧倒的な技術である。人物の顔や奇妙な人形とスライム状の半透明な液体をからませて、ぬめりと光沢のある物体を描き出すのが現在のモチーフだが、過去帳を見るとサブカルチャーや映画、プロレスへの偏愛など彼女の着想はそこに留まらない。率直に言って、凄みを感じる。その多彩な側面を持つことも、彼女のパーソナリティの内側への興味を加速させる。

Tomozawa Kotao「slime XXIV」2020

作品はエロスと残酷さと驚くべき率直さを兼ね備えているが、本人は人を驚かせるアザトさなど微塵もない。自分が描くべきものを見いだして真摯に描く、画家としての謙虚さと誠実さに彼女の行動は裏打ちされている。

日本的ポップアートが全盛の昨今だが、有り体に言えば剽窃だらけに思われる。だが、彼女は自身が吸収したあらゆる栄養をその脳髄できちんと育て、熟成させて、描きたいものを描く、というシンプルな行動に還元している。そこに私達は心を動かされる。

Tomozawa Kotao「slimeXVIII」2020

10年、20年と年齢を経て、さらに経験を重ねた彼女が、どのようなモチーフに心惹かれ、どのように描き出すのか、その軌跡もまた今から楽しみでならない。

その意味でも、この秋に私どもギャラリーで行う蒼野甘夏との二人展は重要である。甘夏は北海道でひとり活動を続けながら若々しく、みずみずしい魂を持つ作家だ。ふたりの共演によって彼女たちが見る者にどんな体験を与えるのか。

感受性の柔らかな二人の心がさらに伸びやかに生きられるよう、私達も努力を重ねていきます。どうぞご注視ください。(秋華洞 田中千秋)

 

 

exhibition: 蒼野甘夏・友沢こたお 二人展「皮膚」 [ 2021/09/24 – 2021/10/02 ]

artists
Tomozawa Kotao