作家に迫る(第十三回) 大竹彩奈|カタログ「秋華洞」2019年秋号

池永康晟が日本画で人物を描く事を当たり前にする、という一種の運動を初めたのは約10年前だ。明治・大正・昭和時代の「美人画」に着目してきた我々も、そこに伴走を続けてきた。

目の前に題材としている女性を描きたい、という衝動は実はごく当たり前のことではあるが、実は、現代アートの文脈の中で、日本画の存在意義自体が問われている今、美人画を描いていこう、という方向性が本当にアートシーンを動かしていくのは、そう簡単なことではない。

それでも池永は多くの伴走者を得た。大竹彩奈は、そのなかでも最も強力なプレイヤーだ。

大竹 彩奈「たくらみ」2017

ただし、彼女は池永の影響下で女性画を描き始めたわけではない。だが、芸大の正統な日本画教育を受けた大竹の描写力は傑出している。絹本着彩・線描の伝統技法を重視しながらも、現代的で緻密なデッサン・構成に基づいた人物描写は、かつての日本画の文脈にあらたなページを付け加えつつある。

彼女の美人画の持ち味は「色気」だ。女性画家が女性を描くとき、自己投影の要素が強くなる。だから「色気」を出そうとすることは必ずしも当たり前とはいえない。

彼女の場合、智内兄助が描いた宮尾登美子の小説『蔵』の表紙絵となる女性像が自分の絵を描く契機になったという。

大竹 彩奈「それでも」2019

また、一方で彼女は自身の姉の美しさへの憧れと、コンプレックスさえ抱いているという。画家本人も十分美しいにもかかわらず、姉への憧れが勝り、自分は影となって女の「色気」を描こうとする側に身をおいた。そのため、モデルは主として姉がつとめている。

彼女の描く対象は、そういうわけで「内部」でなく「外部」となった。女性目線での「色気」とは何なのかを彼女は追求するが、ある意味であくまで素直で率直な表現が彼女の世界だ。

クレ・ド・ポー ボーテ2019ホリデーコレクション 「KIMONO DREAM」©資生堂

大竹は多くの小説の装丁画も手掛け、女性だけではなく、男性や山水画、歴史画などもきちんと描写できる地力がある。また絹本を扱う技術も突出している。「日本画」の存立がゆらぐ今日だが、彼女は日本画が持つ潜在力を目覚めさせ、その存在領域を広げてきた。

近頃では、資生堂の高級化粧品ブランド「クレ・ド・ポー ボーテ」の2019年クリスマス限定商品のパッケージに彼女の作品が採用される。女性の色気=美への憧れを描く彼女の世界にピッタリの仕事だ。

そして、この秋、東京美術倶楽部で開かれるアートフェアで、秋華洞は大竹彩奈と岡本東子の二人展を行う。今回の二人の共通テーマとして彼女らは「欲」を選んだ。「色」と「欲」、人間の根源的な要素を手にして大竹と岡本はどのように「女性」と「日本画」の魅力を見せてくれるのだろう。(秋華洞 田中千秋)

東美アートフェア2019「岡本東子・大竹彩奈 二人展」 10/4~6 開催

Exhibition: 東美アートフェア2019「岡本東子・大竹彩奈 二人展」
外部リンク:ホリデーコレクション | クレ・ド・ポー ボーテ
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大竹 彩奈