Closing in on Our Artists (Vol. 15) Kakinuka Hiroki | Catalog "Shukado" Spring 2020

柿沼宏樹の世界の主たるものは、パノラミックワールドである。大画面に、宇宙人と地球人、そして鳩や鶏などの動物たちがひしめく。そこに何故かゴジラよろしく大怪獣がしばしば街を破壊して回る。

この種の俯瞰図を描く画家は古今東西にいるが、彼の特色のひとつは「怪獣」であり、怪獣たちは、たいてい、東京タワーのような建物を破壊する。面白いのは、だが、その状況に登場するすべての人物が、なんら慌てていないことである。銃口を怪獣に向ける自衛隊と思しき人々が画面の一部に見られるが、たいていの老若男女の登場人物は、自らの住居が破壊されかけているにもかかわらず、指をさすなりカメラを向けるなり、あたかも動物園の客のような態度で、呑気なものである。あるいは別の作品では、大量にいる宇宙人や半人半獣の生き物と人間がこれまた冷静に交流をしている。

柿沼 宏樹「Rhapsody #11」2017

映画スターウォーズに登場する「宇宙酒場」のような状況なのだが、考えてみればこれは最早多くの国の日常にも近い。香港やロサンゼルスでも歩けば、当たり前に様々な肌の色、宗教、風俗の男女が道を闊歩している。
 実はこの異文化交流のパノラマは、現代世界の実像そのモノであると共に、彼自身の問題意識に根ざしている。日本人、アジア人、西洋人が混じり合い、混乱し調和する過程にも思われる21世紀に、私達は何を目指すのか。

柿沼宏樹2020「ubiquitous」(部分)

コロナウイルスによる世界の分断を見ていても、すべての民族が認めあって共存する世界は夢であって現実ではないとも言えるが、しかし、その夢を見ない世界というのもすでに現実的ではない。
 異種の人間が異物でありながら共存する彼の世界観による絵画は、現実に人が交わることの日々の成功と失敗を見守るシンボルであり続けるだろう。

Exhibition:柿沼宏樹×髙木陽 二人展 ドメスティックエイリアンズ 2020年7月3日(金)〜12日(日)

artists
柿沼 宏樹