作家に迫る(第一回)池永康晟|カタログ「秋華洞」2016年夏号

 池永は、私ども秋華洞が手がけた最初の現代画家である。
 はじめて会った時、彼はほぼ独学で画を学び、女性ばかりを描いていた。知名度はなく、畳の上で身じろぎするだけで床が揺れるような、都内の借家の二階に住んでいた。
 彼はすでに40を越えていた。20年近く、自分だけの絵肌を研究するために殆どノマズクワズに等しい時間を生きていた。彼の資質は絵から伝わってきた。見つけた、と思った。

見つめ合うように筆を重ねる、濃密な時間。2016年6月アトリエにて。

 2008年から彼の企画を、国内外で年に一、二度開いた。2014年には高島屋での大きな個展が開かれ、個人画集が出版され、人気に一気に火がついた。
 一方、彼と若い「美人画」絵かきを探した。私どもで扱う、岡本東子、中原亜梨沙を発見したのは、彼である。
 ところで、彼の絵の特徴のひとつは、登場する女たちが、抽象的な匿名の存在ではなく、生きたひとりの女であることだ。画題には必ず女性の名前が刻まれる。

池永 康晟「結び目・マキ(女・龍宇堂マキ)」2016

 生きるための幻想を与えてくれるオンナを愚直に描き続ける彼の指先は、その命を辿ろうと懸命である。さらに絵は円熟味を帯びてきた。女達の命はやがて尽きても、作品たちは生き続ける。たとえ幻でも、ひとは池永の絵を求めている。(秋華洞 田中千秋)