作家に迫る(第八回) 三嶋哲也|カタログ「秋華洞」2018年夏号

三嶋さんとの付き合いは、たまさか手に入れた彼の静物画から始まる。このカタログに掲載するに当たり、お知り合いになったのだ。
もともと、とあるホテルアートフェアのバスルームで展示されていた、なにか異様な魅力を放つお尻の作品を拝見して気になってはいた。
だが、なんとなく自分は「日本的」なものを扱っている自覚があったので、油彩の先生は若干縁遠く感じていた。
しかし、彼は、従来の展覧会ではあまりにお色気が強いとよろしくないなど制約もあり、暴れ足りないと感じているらしいことがわかった。私ども秋華洞は、春画も扱っている。エロはお手の物だ。ウチなら好きにやってもらえると思い、三嶋先生とのお付き合いが始まった。

三嶋 哲也「Mellow line(Lily)」2018

ひとつは、一九世紀以前の油彩画への偏愛である。世の中、写実ブームなどと言われているが、実は画派にはいくつかあって、一枚岩ではない。三嶋さんの場合は、徹底して懐古的に技術を追求した上で、あらたな技術を開発している。その知識と技術には舌を巻く。写真を全く使わず、モデルを数時間拘束して描く、というスタイルも実は近頃の写実の人たちの中では珍しい。最近の絵は、写真を多用することで、絵画性、肉体性を失ってしまっているという現実が裏にある。彼の作業は、その絵画的怠惰をひとり振り払っているのだ。

三嶋 哲也「カトレアと苺」2015

もうひとつの彼のフェティッシュは、尻である。女性の肉体への賛美には、大きく言って三派あると思う。胸派、尻派、そして脚派である。彼の場合、これはもう徹底的な尻派である。「くびれ巨尻コンテンスト」なるものがあるのだが、彼はなんとその審査員長を勤めている。

三嶋 哲也「ENA」2017

今の写実ブームは、全体としては、居間に飾りやすい「安心」な女性像を求めている。彼の世界は真逆だ。どちらかといえばインモラルの象徴のような絵画群は、したたかなエロスを現代社会に突きつけている。スリリングな彼の世界を楽しんでいただければ幸いである。(秋華洞 田中千秋)