作家に迫る(第十二回) 服部しほり|カタログ「秋華洞」2019年夏号

その描線は渦を巻き、暴れて、跳ねて、どこへいくのかわからない。恐るべき形相の人物や鳥たちが奇妙な調和を保ちながら、躍動し、ときには可愛らしい所作をして、ふと知的な眼差しを落とす。

服部 しほり「探母」2018

最初にアートフェア東京でその作品群を見たとき、強烈な驚きと、ある種の抵抗感を覚えた。
自分は新しくとんでもない才能の台頭を見てしまったような気がする。だが、もしかしたらマヤカシのその場しのぎのものではないのか。いったいこの作者は、どんな人物なのか。

服部 しほり「然有り」2017

彼女をすでに扱っていた画廊さんたちとお話をする機会を持ち、さらに服部しほり本人と会うことになった。小柄な彼女は、ひとりでバイクに跨って現れた。強烈な絵のイメージとは裏腹に、可愛らしいその女性は、柔和な京都弁をあやつり言った。「あの絵の中のおっさんたちは、私の理想なんです」。心の中の彼女の姿は、あの奇っ怪な顔で絵の中を暴れまわる男どもだというのだ。そして言う。「日本人として、日本を大事にしたい。だから線を大事にする絵を描きたいんです。」と。
なんとなく、服部の世界が見えてきた。あの強烈な世界はハッタリではない。彼女にとって自然かつ必要な表現なのだ。
うちでも、扱わせてもらうことにした。そして三年が経つ。

服部 しほり「愛縁」2019

9月に開かれるartKYOTO2019で、彼女は夫である現代アーティスト、乃村拓郎と二人展を行う。京都二条城の一角にあえる和室に秋華洞ブースを設け展示することになるだろう。
「大事にしたい日本」とは何か。彼らがそこで出してくれる答えを、楽しみしている。
(秋華洞 田中千秋)

Exhibition: artKYOTO2019