中原亜梨沙 "器"(アイコン)としての女たち|アートコレクターズ 2016年3月号

中原亜梨沙が描く、屹然としたおもむき、凛とした眼差しでこちらを見据える女性像を目にした人も多いだろう。84年生まれの若手ながら、高い人気をほこる。どこかレトロなイラストレーションを思わせる、線描と、日本画の画材を生かした鮮やかな発色で描かれる生命力に満ちた女性たち。

彼女の学生の頃の作品には、情念を感じさせる暗い雰囲気の、写実的な裸婦の群像があった。今の明るい作風とは正反対のようにも思える。

「ひらいて、むすんで」2016

「制作していく中である女性モデルと出会い、その女性から感じる儚さに惹かれ当時はその方だけを描き続けていました。学生時代を経てこれからの表現を考えた時、今までの作品を振り返ってみると『限りあるものだからこそ』という思いが『死への恐怖』や『漠然とした不安』として作品に強く出すぎてしまっていると気がつきました。そうではなく、人がまず見る絵にしたいと思いました。それで考えて、何が伝えたいかと言うと『今を強く生きる』ということだなと。限りある命なのだから、その分一瞬一瞬を一生懸命に生きたいし、逞しく前向きに生きて欲しいと思っています。

根っこは変わっていないんですが、その頃から平面的な、今の作風にしぜんと変わっていきました。中原淳一のイラストレーションはずっと好きですが、彼の描く女性には、どんな時代でも美しく輝くものであってほしいという希望の願いが込められているのだと思います。

女性たちには『器』であって欲しいですね。女性でありながら誰にもあてはまらないようなかたちであり、見る人が前向きな思いを託せるものであってほしい。目の表情には、一番こだわります。

音楽が好きで、音楽的に構成を考えるところもありますが、異常な速弾きであるとか何か人間業と思えない仕事に憧れます。でも、やりたいことと出来ることは違うものです。私は不器用ですから、細部をとにかく徹底的に描き込んで、妥協無く、悔いの無いように仕上げることを心掛けています」(2月、アトリエにて)